2020年は、想定外の、そして変革をもたらした年として記憶されることでしょう。年の終わりにあたり、達成された重要な中間目標と、行われた重要な決定を振り返り、来年への期待と予測を明らかにします。
パンデミックの期間を通じて、当社の主要な優先事項は、従業員へのケア、お客様の為のビジネス継続の保証、そして全てのお客様のより良い未来を築くために意思決定を加速することでした。取り巻く状況に対応して、コンピテンスセンターからライブストリーミング(ネットによる生配信)でのデモンストレーションを展開し、最新の印刷・加工テクノロジーを知って頂く没入型体験を提供しました。また、年間を通じていくつかのウェビナーを開催し、当社の新しいソリューションの情報をお客様に提供し、業界での経験を共有して参りました。
ブランドオーナーは、市場投入までの時間の短縮、ロットサイズの縮小、最適な保護、色の一貫性など、激化する競争とプレッシャーに直面しています。これらの要素は、eコマースを含む新しいビジネスモデルに伴う小規模企業の台頭や、持続可能性への取り組みの必要性と相まって、パッケージング業界を大きな変革へと導いています。
したがって今は、敏捷性と持続可能性を推進する機会となっています。 2020年の春、BOBSTは、品質、効率、管理、持続可能性、そして顧客との近接を実現するために、新しいバリューチェーンを通して、全てのパッケージング関係者をつなげることを目指す新しい業界ビジョンを発表しました。
未来のパッケージングの世界を形作るこのビジョンには、次の4つの柱があります。接続性、デジタル化、自動化、持続可能性です。そのビジョンの中で、すべての製品をデジタル化して接続するためのソフトウェアベースソリューションとして、BOBST Connectを発表しました。
そのビジョンは現在、新しい製品とソリューション、新しい企業構造そして、より顧客中心で、簡素化され、より俊敏で、さらに多くの革新技術を提供する新しい企業構造によって、現実となりつつあります。当社の新しい構造は、それらの事業所とは、軟包装を扱うイタリアのサンジョルジョ、段ボールを扱うフランスのリヨン、紙器ソリューションを現地生産するブラジルのイタチバです。
紙器と段ボール
2020年、紙器および段ボールの業界では、世界的なオンライン小売の成長により、eコマースの全体的な加速状況が見られました。そこでは、品質、廃棄物の削減、商品の保護が基本となっています。紙器については、持続可能性、世界的な規制の強化、小ロット生産やカスタマイズ需要の増加も、重要性を増しています。
当社は紙器向けに、2つの連結した製品;MASTERCUT 106 PER打抜機とTooLinkを投入し、ツーリング(型の製作)を機械に接続しました。これらのソリューションを組み合わせることで、準備時間とコストを大幅に削減し、比類のない生産性により収益性を高めることができます。また当社は、カートンブランクの欠陥検査のインラインソリューションである新型 ACCUCHECKを発表しました。つまり、紙器分野に於いて、不良品ゼロのパッケージングを実現したのです。また、大判平盤打抜機の最新モデルであるVISIONCUT 145 PERも発売し、販売は大成功を収めています。
新たに投入されたMASTERSTARは、世界で最速、極めて高い自動化、用途の広さ、高度に人間工学的、などの性能を誇るシート+シート合紙機で、板紙と段ボールの両方に対応しています。当社がPOWER REGISTERを発売してから20年を迎えました。これは業界初の「非接触型」シート見当システムでしたが、今日でもその機能はユニークであり続け、真の革新技術は時間の試練にも耐えられることを示しています。
段ボール関連では、VISIONCUT 1.6平盤打抜機で、販売台数300のマイルストーンを達成しました。既存製品への投資も継続され、各機種でアップグレードが行われました。製函機EXPERTFOLD 145-165シリーズでは、これによって準備時間がさらに20%短縮され、段ボール製凾での柔軟性と精度をさらに向上させることができました。デュアルスロッターを追加したFFG924 NT RSは、1回の印刷で2つのボックスを製造出来、柔軟性と生産性を大幅に向上させ、1時間あたり最大40,000ボックスを生産できるようになりました。
eコマースの成長により活況となっている市場では、FFG 8.20 EXPERTLINEが引き続きベストセラーになっています。FFG 8.20には、Fluid Folding(流れるような折り込み)機能を追加しました。これにより、折り品質が向上し、標準仕様を超える折りの公差が保証されています。2020年のハイグラフィックスパッケージの生産では、THQ FlexoCloudテクノロジーが、主要なお客様の間でさらに勢いを増しました。色域の95%に到達できるoneECGソリューションであるExtended Color Gamutは、加工業者が、フレキソ印刷テクノロジーを新市場に展開し、既存の設備を活用し、資金を留保し、重要な持続可能性のメリットを手に入れるために役立っています。
中国では引き続き事業の伸びがありました。そのハイライトには、中国の主要な段ボール・板紙パッケージングメーカーZhejiang Dashengda社からの、FFG 8.20 DISCOVERY 1台とe-LINE打抜機2台(Eterna社と共同で設計および製造)という大きな注文が含まれています。また、英国で最初のFFG 8.20 DISCOVERYを、Manor Packagingという製凾専門企業に販売し、市場で大きな競争優位性をもたらす新たなレベルの自動化を提供しました。
2021年には、より高い価値を持つプレミアムパッケージの短時間生産の継続的な増加が見込まれます。つまり、加工業者には、少量生産でのコスト効率が求められるので、より高度な自動化が必要になります。アジア、特に中国では大幅な成長を期待しています。個人所得の増大と伝統的な小売やeコマース商品の伸展が、推進力となると予測されています。製品の観点からは、製函機から出てくるボックスを優しく束ねる画期的全自動段ボール箱パッカーであるSPEEDPACKが、新しい業界標準になると信じています。
ラベルと軟包装
2020年を最も的確に表す3つのキーワード:デジタル化、自動化、持続可能性
ラベルの歴史では、2020年は業界の新しい章の始まりとして記憶されることでしょう。BOBSTは、ラベル製造のデジタル化の第1章には参加しませんでしたが、現在では、高品質、高生産性、低コストを組み合わせて、第2章をリードしています。
Mouvent LB701-UVとLB702-UVは、6色+白色を備えた2種のラベル印刷機で、最大速度100m/分の能力を持ち、今や新しい基準を築いています。Aptech Graphics社は、LB701-UVへの投資により、米国市場でその恩恵を受けた最初の企業になりました。
BOBST MASTER DM5は、ラベル業界のデジタル化の新しい基準を打ち立てています。下塗り、印刷、装飾、型抜き、そのすべてが1つにまとめられてインライン化され、デジタル自動化された運転を止めないノンストップジョブチェンジ、極めて高い機械稼働率、そしてオペレーターのスキルに左右されない卓越した再現性を実現します。この印刷機はすでに、ヨーロッパの顧客4社に納入され、最近、各年の最高の技術開発を称えるEuropean Digital Press Association(EDP)賞を受賞しました。
2021年に向かい、デジタル化がラベル製造の主力となり、すべての加工業者が、生産現場を最適化するための完全なエンドツーエンドのデジタル化ソリューションを検討することになるでしょう。すべてをデジタル化することで、加工業者はより速い納品、より優れた品質、無駄の削減を実現でき、オンデマンドのラベル生産に対する高まる需要に応えることができます。
軟包装では、新しいMASTER CIフレキソ機が、先端テクノロジーとスマートなシステムの組み合わせで、オペレーターのスキルレベルに関係なく、最高の生産性、プロセスの安定性、柔軟性を実現します。このマシンは、BOBSTの主柱である接続性、デジタル化、自動化、持続可能性を最適化しています。
軟包装の全ての製造工程に専門的に関わるために、当社は引き続きバリア/サステナブル塗布の真空金属蒸着に取り組んできました。インドのフィルム市場では、Sparsh Industries社がBOBSTの新しい真空蒸着機EXPERT K5 3300 mmとAluBondを採用してからは、ナンバーワンの地位を確立し、インド市場への参入は大きな成功を収めました。
輪転グラビア印刷では、画期的な拡張色域管理ソリューションであるoneECGを発売し、グラビア印刷にデジタル化と持続可能性をもたらし、より小ロットの生産をも可能にしました。グラビア印刷でも、あるタバコパッケージング会社が3台目となるLEMANIC RIVIERA ILSに投資し、そのマシンがタバコパッケージ用インライン印刷加工機としては、クラス最高のソリューションであることを認めています。
2020年には、無溶剤ラミネーターNOVA SX 550の発売もありました。このプラグ&プレイマシンは、多様な素材や厚みに対応して、あらゆるロット長の生産に於いて、コスト効率の高いパフォーマンスを提供するように設計されています。非常に短時間で設置でき、オペレーターには使いやすい製品です。NOVA SX 550をアルゼンチンの企業に納入しましたが、BOBSTからのリモート支援もあって、シンプルなプラグ&プレイ設計で出荷と設置が容易であることが確認されました。
コーティングの分野では、以前に新しい高バリアソリューションを発表していましたが、フィルムや紙へのバリアコーティングアプリケーションの研究開発プロジェクトを続行しました。ブランドオーナーや材料サプライヤーとのコラボレーションを継続し、新しいソリューションのテストと検証を行い、新しいPVDCプロセスコーティング機を米国の顧客に販売することができました。
2021年を展望すると、持続可能なソリューションへの加速が加工業者レベルで見込まれ、印刷設備やコーティング設備(真空とウェットの両方式)への投資が増加することになると予想されます。当社は、適切に製造されて適切にリサイクルされるプラスチックパッケージには未来があると強く信じており、それを実現させるように取り組んでいきます。
各種サービス
2020年には、人の移動に混乱や制約を経験し、サービスという言葉も異なる響きを持つものとなり、高品質のリモートサービスがかつてなく重要になりました。Helpline PlusとPremiumサービスにより、BOBSTは顧客にリモートで非常に効果的にサポートを提供し、高い顧客満足度を実現できました。実際、Bobst提供のサービスに対するお客様の満足度を測定するNPSスコアは、困難な状況であったにもかかわらず、2020年も伸び続けました。
2020年4月から9月の期間には、リモートサービスの件数は2019年の同時期と比較して12%増加し、全体の時間は29%増加しました。今年は今迄に、合計で40,000時間以上のリモートサポートが提供されました。この増加は、Helpline PlusとPremiumのサブスクリプション数が14%増加し、リモートサービスのメリットを享受する顧客が増えたことの結果でもあります。Helpline Plus ARは、拡張現実(AR)メガネ付きスマートヘッドセットを組み込んだ、パッケージング業界初のリモートアシスタンスサービスで、制約がある中でもオペレータートレーニングをリモートでアシストできるので、多くの顧客に使用されました。有用でした。
さらに、当社では、お客様との距離を縮めることにますます重点を置いていますが、現地在住の技術者が、移動に制限があったにも関わらず、かなりの数の重要な現場訪問を維持することができました。また、適切な在庫管理方針と、部品供給業者との絶え間ないコミュニケーションのおかげで、部品供給のサービスを優れたレベルに維持することもできました。
2020年に、BOBSTは、すべてのパッケージング業界向けに、包括的な品質管理サービスoneINSPECTIONを発表しました。これは、統合され進化する一連の品質管理ソリューションで、ブランドオーナーや加工業者のニーズに積極的に応えて、ラベル、軟包装、紙器、段ボールの各業界で、不良品ゼロのパッケージングを現実にするものです。
大サイズ段ボールに最適で、oneINSPECTIONサービスの一環であるLarge Format Digital Inspection Table(大判デジタル検査テーブル)は、ヨーロッパでの大規模なロックダウンの数日前に発表されました。最初のテーブルは、デジタル化を明確な競争上の優位性と見なしているイタリアの加工業者ICO社によって取得されました。Large Format Digital Inspection Tableは、最近EDP賞を受賞し、印刷されたシートやブランクの校正を効率的かつ正確に管理できることを実証しています。
ツーリング(型の製作)は、引き続き主要な焦点であります。今年は移動に制限があったにもかかわらず、BOBST認定の型メーカーの数が、4大陸で17社に増えました。2020年初頭に買収したツーリング消耗品メーカーのCITO-SYSTEM社との協力で、High Performance Tooling(高性能ツーリング)を開発しました。これにより、ツーリングの新しい基準を構築するとともに、打抜き運転速度の最適化と製品品質の向上を加工業者に提供しています。。TooLinkが発売され、ツーリングのデジタル化への第一歩が現実のものとなりました。型と打抜機の接続によって、機械内での設定が素早く行えるため、リピートジョブの切り替え時間は15分近く短縮され、日常業務に於いて貴重な時間が節約されます。
2021年には、リモートアシスタンスがさらに成長すると予想されます。品質管理ソリューションは、無駄やクレームを減らし、収益性を高める最良の方法として、重要性も増すでしょう。BOBST oneINSPECTIONサービスは、不良品ゼロのパッケージングを実現するというBOBSTの取り組みの一環です。
要約
2020年は予想外の年でしたが、基調的な動きが加速され、決定がより明確になりました。当社が取り組んできた業界のビジョンが、適切でタイムリーであることが確認されました。接続性、デジタル化、自動化、持続可能性は、未来のパッケージングの世界を構築する4つの柱となり、有意義な技術革新によってこれらを達成したいと考えています。2020年に当社は130周年を迎え、3つの事業所を全面的に改修し、起業家精神に基づく新しい企業構造を展開して、お客様との距離を縮めました。
2021年は結局のところ2020年と大きな違いは無いでしょう。私達は、弾力性を持つことが必要であると同時に、最も重要なこと、つまり意義ある技術革新を続けることに、焦点を当てる必要があると考えています。私達は、クラス最高の機械とサービスを提供し続けます。一方で、インテリジェンス(情報)とソフトウェアの能力を加えることで、パッケージ生産をこれまで以上に改善していきます。今後登場する全ての機械と新製品は、この取り組みを示すものになります。どうぞ、ご期待下さい。
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